仮置き場

ツイキャス『禍話』で語られた怖い話の文章化を主にやらせていただいてます

リライトの使用に関するお知らせ(追記有り)

※23年1月末追記
禍話公式より以下の通り、声明が出されました。

 

禍話 二次創作に関して

https://note.com/nightmares4/n/na4b584da01fe

 

今後、特に大きな変更のない限り、私のリライトに関してはこちらの内容に準拠するものとします。

 


なお、朗読等で私のリライトを使用したいという方は、以下の文章をお読み頂ければ、と思います。
(この辺については、以前と変わりはありません)

 

 

 

平素よりご覧いただき誠にありがとうございます。

また、近頃はYouTubeでも自分のリライトを元に朗読していただくことも多く、あまりこういうことに慣れていないこともあって本当に恐縮しております。

 

一方、先日。自分をはじめ他の皆さんのリライトが無断転載されるという問題も発生しました。

これを受けて、

『朗読をしたいのだけど、リライトを使用してもよろしいですか』

というお問合せも受ける様になりました。

ですので、一度そのあたりについて明記しておこうと思います。

 

 

●基本的には『禍話』の理念に基づき、私のリライトについては朗読、ゆっくり等、ご自由にお使いいただいて大丈夫です。

 


(22年9月末追記。とはいえ、全く連絡無しに使われるよりは、一言連絡を頂いた方がこちらとしても気分が良いというか覚えが良いというか、そういう面も確かにあります。
そもそもの問題、その一つである完全に『無断転載』のブログ。あんな感じにやられると、流石にこちらもムッとしますので…)

 

●その際。

①『出典が禍話であること』『私のリライトを元にしていること』この二つを明記する。

 

②『元ページ(禍話の該当する放送回、私のリライト記事など)へのリンク』を貼る。

 

この点を守っていただきたく思います。

 

具体的には、例えばYouTubeなら動画の概要欄にその旨を記載していただく。そういう形でしょうか。

 

私のリライトは最後に、その話の放送回、禍話wiki、舎弟さんや酢豆腐さんの切り抜き動画へのURLを貼っていますが、それを適宜改変しつつコピペしていただく、というのもいいかもしれません。

また、例えばゲーデルさんなど、既に私のリライトを朗読して下さっている方もおられますが、そうした皆さんの動画を参照していただくのもいいでしょう。

(いつもありがとうございます。楽しみに聞かせていただいております)

 

 

●それと、これは普段から本編を聞いてリライトする際にもしていることですが、発表する媒体に合わせて聴きやすい、読みやすい形にアレンジしていただいても大丈夫です。

ただ、『著しい改変』はご遠慮いただきたいかな、と思います。

(例えば、話の中身が大幅にガラッと変わってしまったり、話の良さや怖さの核となる部分を削ったり、ということです。さすがにそれはないとは思いますが、一応)

 

 

●そして、自分はあくまでリライトを『趣味』としてやっていますので、これでお金を稼ごうという気持ちは毛頭ありません。

ですが、YouTube等の他の媒体についてはよく知らないので、もしかしたらそちらでお金が発生する、ということもあるのかもしれません。

その場合、もしよければ本家である禍話の語り手、かぁなっきさんへAmazonのほしい物リストから何か贈ってあげるといいんじゃないかな、と思います。

 

 

 

……今後、何かしら事情が変わったらここまでに書いた内容も変化するかもしれませんが、今のところはこんなところでしょうか。

 

 

つまるところ。

私のリライトに関しては、

『出典をちゃんと表記し、元記事へのURLを貼ってね』

ということであり、

『無断転載。自作発言。本編から逸脱した改変。そういうこと(あるいはそれに類する行為)だけはやめてね』

ということです。

これらを守っていただく限り、基本的に使用をお断りすることはないと思います。

また、何か不明な点などがあれば可能な範囲で対応しますので、その際はnoteの問い合わせ用のページやツイッターなどからご連絡ください。

 

※ただ、上記内容に関してはあくまでも、

 

『私のリライト』

 

についての話ですので、他の書き手の方々のリライトを使用したいと思われた時は、
(ヴェナルとかいうやつがこう言ってたから、それでいいだろ)
などと横着をせず、その都度書き手の方にコンタクトを取って了承を得るようにしてください。
言うまでもないこととは思いますが、念のため。

 

 

……吶喊で書いたということもあり。長々と、グダグダとした内容ですが、『禍話』というコンテンツを心穏やかに楽しむためにも皆様にもお伝えしておかなくてはと思い、リライトをやっている者として、それ以前に一人のリスナーとして書かせていただきました。

よろしくお願いします。

禍話リライト コンビニ暴力おじさん

もし身の周りに、夜にコンビニ前でたむろするような人がいるなら、すぐやめるよう注意した方がいい。

そういう話。

 

 

もう何年も前の、N県での出来事だという。

地方では、元は別の建物があった土地を流用していたりするため、長距離トラックの運転手が駐車場で休憩できる。それくらい広い敷地のコンビニは珍しくない。

そのコンビニもそんな類の店舗だったのだが、ある時期から、そこの駐車場の一角でガラの悪い若者たちがたむろするようになった。

 

連中は深夜になるとやってきて、駐車場の片隅に座り込み、その店で買った酒を飲みながらだべり始める。

厄介なことに。

変に騒いだりしないし、たまに空き缶を捨て忘れるくらいでゴミを散らかしたりもしないので、店側としても微妙に注意がしづらい。

とはいえ、駐車場の一部を塞いでいることには違いないし。他の客、特に一人で来るような女性が不安に思うわけだ。

 

深夜帯のバイトから連中の話を聞かされ、店長はどうしたものかと思案したが。

「例えば、もっと散らかしたり騒ぐようになって、それを監視カメラで撮影できたら何とかできるんだけどねえ…」

その時点では、ほとんど何もできなかったそうだ。

 

 

──しかし。

ある時を境に、急にたむろしていた連中は姿を消したそうだ。

 

結果だけ聞けば、めでたしめでたしと。そう思うかもしれない。

が、実際には。とんでもないことがあったから彼らは消えたのだという。

 

 

──事件の起きた、その夜は店長によるワンオペだった。

店内には客もおらず、彼は一人で仕事をしていたそうだ。

 

仕事の合間、ふと外を見ると。

駐車場の隅で、また連中が座り込んでたむろしている姿が見えた。

 

近頃では、バイトの女の子の中にも、深夜帯に一人で店番をすることを不安に思ってシフト変更を申し出る者も出てくる始末だ。

 

(まいったなあ……)

 

近所から騒音の苦情が入れば警察に連絡できるのだが、悪いことに民家から少し離れた場所にあるのでそういうことにもならない。

悪い話だが、気の荒いトラック運転手あたりとモメたりすれば、とも考えたが。そういう客が来ると連中は途端に静かになってしまう。

なんともやりにくいことだった。

その晩の彼らは、他に客が無いため、いつもより騒いでいた。

その声を聞きながら、店長は悩んだ。

 

(どうしようかなあ、やっぱり警察に相談とかするべきなのかなあ……。でも、ウチみたいなフランチャイズ店だと、警察に行ったら本部の方からいろいろ言われたりしそうだしなあ……)

 

つらいところだなあ。

そう思っていた時だった。

 

駐車場に、一台の乗用車が入ってきた。

店の入り口のすぐ前に車が止まり、そして中から男性が降りてきた。

 

私服姿だが、恐らくはサラリーマンだろうなという感じの見た目だ。少し細身ではあるが、特に変わったところのない、乗ってきた車同様ごく普通の中年男性だ。

そしてこれまた、普通に店に入り、普通にパンやジュースなどをカゴに入れ、レジで会計をしていった。

 

その男性の応対をしながら、彼の方を見て。

店長は、ふと思った。

 

(……この辺じゃ、見かけない人だな)

 

とはいえ、地方の道路沿いの店舗である。

例えば、深夜にドライブをしていた別の地域の人がたまたま立ち寄った、なんてことは特に珍しくない。

そういう人なんだろうと思い、店を出ていく男性の後ろ姿を見ていると……。

 

 

「……ん?」

おかしなことに気がついた。

 

 

男性は、車を店の入り口のすぐ前に停めた。

 

なのに、彼は自分の車とは別の方向へと歩いていくのだ。

 

 

彼の歩いていく先には、例の連中がたむろしている。

「……あれっ⁉︎」

一瞬、男性は連中の知り合いなのかと思ったが、見た目も服装の系統も別だし、何より年齢層もまるで異なる。まず知り合いではないだろう。

なのに、男性は連中の方へ何をしに行くのだろう。

何となく気になった店長は、店外のゴミ箱を片付けがてら、外に出て様子を見てみることにした。

 

 

外に出ると、駐車場を横切って連中の方へ向かって行く男性の後ろ姿が見える。

たむろする連中の方も、自分たちの方に向かってくる男性に気がついたようだ。

なんだあいつ。俺たちに何か用か。

そう言いたげな、怪訝な顔で様子を伺っている。

 

とはいえ。

トラック運転手に日和るような奴らとはいえ、夜中にコンビニでたむろするような手合いだ。連中の見た目はそれなりにイカつい。

対して男性は細身で、パッと見ではあまり強そうには見えない。

 

だから、連中も油断したのだろう。自分たちが座っているすぐ近くまで来た男性を上目遣いに見ながら、一人が言った。

「なにオッサン? 俺たちに何か用なの?」

 

 

次の瞬間。

男性は、そいつの顔面を思いっきり蹴飛ばした。

 

 

「……えっ⁉︎」

突然の予想外の出来事に、思わず短く声を上げ、硬直する店長。

 

どうやら、たむろしていた連中も、それは同じだったようだ。

何が起こったのかわからず、 店長同様、血を吹いて崩れ落ちる仲間を見ながら硬直している。

 

その隙をついて、男性が連中をボコボコに殴りつける。

店長曰く、随分と容赦のないやり方のように見えたという。

つまり、素人目に見ても『その場所にそんなことをしたらダメだろう』と思うような、そんな攻撃を、澱みなく叩き込んでいくのである。

 

その晩、駐車場にたむろしていたのは三人組だったそうだ。

酩酊していた。座り込んでいて、すぐに動けない体勢だった。そして、風貌から相手を見くびっていた。さらに言えば、不意打ちではある。

そうした事実があるにしても、男性はたむろしていた三人を単独で叩きのめしてしまったのだ。

 

 

……とはいえ、これは明確に事件である。

「……えっ? ええっ⁉︎」

目の前で繰り広げられる暴力沙汰に、最初は理解が及ばなかった店長だったが、すぐに我に帰った。

「ちょ、ちょっと! ダメですよ!」

男性を止めるべく、駆け寄っていった。

 

 

……すると。

倒れてうめく連中に攻撃を加えつつ、男性が何事か呟く声が聞こえた。

 

まるで、駅の立ち食い蕎麦屋で、

「昨日はうどんを食べたから、今日はそばにしようか」

と、そんな風に、何気なく独り言を呟くような。

そんな、落ち着いた声だったという。

 

 

「……地べたに直に触れたものは、バイキンと同じだ」

 

 

(ええっ……)

連中に執拗な攻撃を加えながらの男性のその呟きを聞き、店長はもう動けなかった。

体格的には店長の方が男性より大柄ではあった。その気になれば、取り押さえることは可能だったかもしれない。

 

 

だが、連中に攻撃を加える男性のやり方は、

(店長は、格闘技などには詳しくなかったとはいえ)

そんな場所にそんなことをしてはいけないと、率直に感じるような。

そんな、随分と手慣れた行為のように思えたという。

 

 

そんな光景を、唖然として見ていると。

不意に、男性の攻撃が止んだ。

「……あ〜ぁ」

息を吐くかのように呟き。ふらり、と立ち上がる。

その足元では、目だの腹部だのとよくない場所に執拗な攻撃を加えられ、倒れ伏した三人が呻き声をあげている。

足元の彼らに目を向けもせず、男性が再度呟く。

 

「……地べたに直に触れたものは、バイキンと同じだ」

 

(それで、そんな攻撃をするの⁉︎)

 

(……ヤバい人だ)

男性のその言動にゾッとしながらも。

店長は、倒れて呻く連中の方へとソロソロと近づいていった。

 

自分の店の敷地内で起こった事件だ。

迷惑行為を行っていた奴らとは言え、放っておくわけにはいかない。

それに、男性の方も、自分には敵意を向けていないという、そんな感覚があった。

だから、さすがにボコられて倒れ呻く連中を介抱してやらなくては、と。

そう思ったのだ。

 

 

……だが。

自分には無関心らしい男性の脇をすり抜け。

連中の側まで来て、様子を見ようとかがみ込んで手を伸ばした時。

 

 

上手く言えないが、『第六感的』なものが働き。

店長は、連中の介抱をやめたのだという。

 

 

その瞬間、背後から話しかけられた。

「……今、なんで介抱しなかったんですか?」

あの男性の声だった。

 

(えっ。いや、なんでだろう⁉︎)

突然、背後からかけられた声に驚きつつ。

自分でも疑問に思ったものの。

その答えは、無意識の内に口を突いて出てきていた。

 

 

「……いや、まあ。地べたに横たわってるから、バイキンと同じかな、って思っちゃいまして」

 

 

無意識の内に、相手の言う理論に合わせてしまったのか。

それにしても、自分は良くない、最低なことを言ってしまった。

そんな軽い自己嫌悪に襲われつつ、恐る恐る目線を向けると……。

 

 

男性は。

満面の笑みで、無言のまま店長へと片手を突き出し。

その親指を立て、サムズアップのサインをしていたのだという。

 

 

そうして、唖然とする店長を尻目に。

男性は自分の車に乗り込み、駐車場を出ていった。

 

 

走り去っていく彼の車。

そのナンバープレートを見た時、店長はあることに気がついたそうだ。

 

 

(……ここと全然違う場所のものだ!)

 

 

男性の車のナンバープレートは。

ここからは、軽く数十キロは距離があるような。

そんな地域のものだったという。

 

 

「……だから。そういうヤカラみたいなのをボコりたくて、それであちこち回ってるヤバいヤツがいて。それがたまたまウチに来ちゃった、ってことなんでしょうねえ」

店長は、そう話を締め括ったそうだ。

 

 

 

──なお。

この話は、その店長から話を聞いた人から提供されたものであるが。

提供者曰く、店長はこうも言っていたという。

 

「……いや、でも。あの時の俺の判断、スゲエよね。やっぱり、俺『思慮深い』よね。いや、咄嗟にそんなことができるのは、俺が『思慮深い』ってことだよね」

 

店長から話を聞いた提供者の方は、

「……いや! 世の中で自分に『思慮深い』って言葉使う人、初めて見ましたよ!」

とツッコみを入れて笑い、それによって場が相当沸いたそうである。

 

 

──なお、先述したように。

この事件があって以来、このコンビニの駐車場でたむろする連中はいなくなった、ということである。

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『禍話インフィニティ 第四十一夜』(2024年4月27日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/792407969

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:12:40くらいから)

題はドントさんが考えられたものを使用しております。

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禍話リライト 怪談手帖『紅白さん』

「又聞きみたいな形にはなるんだけど、許可は取ってるから……」

と、話を提供してくれた方は述べた。

 

 

──借金関連で行方をくらませてしまった同僚のFさんから、昔教えてもらった話だという。

 

Fさんの大学時代の友人に、Aさんという人がいた。

ある日、ちょっとした縁から年末年始、彼の実家へお邪魔したFさんは、奇妙な風習を目の当たりにした。

 

といって、儀式めいた何かだとか、因習と言われるようなことが行われていたわけではない。

Aさんの家自体、兄弟や親戚の多い大家族ではあったが、別に謂れのある旧家などではなかった。

では、何をしていたのか?

 

 

写真を、撮るのである。

 

 

年の瀬が迫ると、Aさんたち一家は親戚も総出になって、家の中で、無作為に、大量の写真を撮影し始めるのだ。

だいたい、数十枚は撮っていたという。

 

 

大家族の記念写真と考えれば、まあそれくらいは撮るかなあという枚数だけれど、記念写真というわけではない。

各々がカメラや携帯電話を持ち、とにかく数を稼ぐようにフラッシュを焚く。

 

 

すると、大量に撮れた写真のどれかに家族以外の人影が写る、というのだ。

 

 

それは必ず、赤い人と白い人が一人ずつで、

『紅白さん』

と呼ばれていた。

 

 

どういうことなんだと困惑するFさんに、Aさんは去年撮ったんだという写真を見せてくれた。

 

 

それは、縁側へ向けられた手ブレのヒドい一枚だったが、その端に真っ赤なモヤのようなものが写り込んでいた。

よくよく見ると、座り込んだ人の輪郭、に見えなくもない。

 

もう一枚。酒宴で騒いでいる親戚たちを引きで写した写真。

テーブルから少し離れたところに、白い、細長い、煙のようなものが写っていた。

よくよく目を近づけて見ると、目と鼻らしきものが見て取れ、気をつけをしている人に見え、なくもない。

 

「……これが?」

と訊ねると、

「これが」

という。

 

偶然というにはややハッキリと写り過ぎているように見えるし、本当に毎年これが必ず写るというなら、確かに不思議だ。

怖くないのか、とFさんが言うと、

「オバケとか幽霊とかいうより、縁起物だから」

という。

 

何でも、Aさんの曽祖父の世代に初めて発見され、今では家の恒例行事になっているらしい。

不明瞭な画面のゴミに近いような形でしか撮れないこともあれば、もっとハッキリ写った年もある。

 

赤い方は人のいない写真に現れ、白い方は人のいる写真に現れる。

そのため、同じ写真の中には写らない。

その年に写るのは必ず一枚ずつであり、どちらかだけが写るという年もない。

概ねそういう法則があるが、よく写るかどうかが家の吉凶に影響したりだとかそういうことは特にない。本当にただの習慣なのだ。

『紅白さん』という名前も、年の瀬だからという安直な由来だそうだ。

昔は一々現像に行かないといけなかったが、今はデジカメ。その場ですぐ確認できるから楽だ、ともAさんは言っていた。

 

Fさんは話を聞きながら、

(何とも奇妙な話だが、まあそういうこともあるのか)

くらいに考えていたという。

 

 

──それから十年ほどして。

社会人となったFさんは、師走のある日、たまたまAさんと街で再会した。

居酒屋に入って、思い出話に花を咲かせていると、時節もあって、あの『紅白さん』のことを思い出した。

「今でもやってるの?」

と訊いたら、

「ああ、いやあ……」

と言い淀んだ後、

「……やってない」

と呟いた。

 

Aさんが大学を卒業した年に起きたことのせいで、止めることになったのだという。

 

 

その年の十二月は、撮っても撮っても、いつまで経っても紅白さんが現れなかった。

大晦日の日になっても、それらしいオーブの一つすら写る様子がない。

単なる習慣とはいえ、皆だんだん躍起になってきて、半ば強迫観念に駆られながら、大晦日の夜は総出になって、百枚どころではない写真を撮り続け……。

 

日付の変わる直前になって、やっと撮影に成功した。

 

「今までにないくらい、ちゃんと撮れたんだよね」

とAさんは言った。

 

ところが。

どう写ったのか。どんな写真になったのかとか。そういうことは一切教えてくれない。酔いの勢いで強めに訊ねても同じだった。

 

ただ。ポツリと、

 

 

「アレは、本当は写されたくなかったんだなあ……」

 

 

と零した……。

 

「たぶん、ひい爺さんの頃から、ずっとそうだったんだと思う……。何で俺たち、ずっと気づけなかったのかなあ……」

泣きそうなクシャクシャとした顔で、Aさんはそのように言った。

 

その後、Aさんの家で誰かが不自然に死んだとか、不幸になったとか、そういう直接的な出来事は何もなかったらしい。

 

ただ、『紅白さん』の習慣だけが途絶え、残っていた写真も全てお焚き上げに出してしまった。

そして、Aさんの家では、あれだけ人気だった紅白歌合戦すら観なくなってしまった。

 

いや、それどころか。

紅白饅頭も、赤白帽も、サンタクロースすらも避けるようになったという。

 

最後の写真を見てしまった家族。

その全員が、赤と白の取り合わせを異常に怖がるようになった……。

 

 

それだけ説明して、Aさんは前後不覚に酔い潰れてしまったそうだ……。

 

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『 禍話REBORN 第十二夜』(2026年1月3日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/828941104

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:15:40くらいから)

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禍話リライト 怪談手帖『まなざし』

アパートの近所の川が怖いとずっと言っていた友人が、その川で溺れて亡くなったので。彼が死の半年ほど前から撮り続けて共有ストレージにアップし続けていた、その川の写真を仲間内で検証したところ。ずっと同じ構図で写された川の風景の一角、ごくありふれた草むらの中に、何か白い点々のようなものが見えた。

 

画像を拡大していくと、それは澱んだ川の流れを凝視している無数の男女の目であることがわかった。

 

しかもそれは、画像の日付が進む毎に少しずつ少しずつ、川からカメラの方へ視線を向けてきている気がしたので。最後の写真の手前で止めて、全て削除してしまったという……。

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『 禍話REBORN 第十二夜』(2026年1月3日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/828941104

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:32:45くらいから)

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禍話リライト 怪談手帖『以津真天(いつまで)』

f:id:venal666:20260507185939j:image

 

昭和の頃の話だという。

 

Bさんの現場仲間が突然亡くなって、高齢な上にロクな身寄りもないからと似たり寄ったりの境遇、その日暮らしの何人かでアパートの掃除を手伝うことになった。

 

無口で影の薄い男だったが、大家曰く、

『許可していないのに、鳥を飼っていた』

とかで、同じ階の住人たちから、外国人に単語を教えるような彼の声と、一拍遅れてひどい棒読みで同じ言葉を繰り返す声が聞こえる、と苦情が出ていたらしい。

 

実際、遺品の中には大きな鳥籠があった。

しかしながらそれは、鳥を飼っていたBさんからすれば、とても使われていたとは思えない代物だった。

 

籠は新品同様にきれいだったし、散乱していた羽は部屋に転がっていた古い枕の中身を出したもののようで、餌入れに詰まっていたカラフルな紙屑は故人の写真を細かく引き裂いた残骸だったそうだ。

 

結局、どこか少しおかしくなっていたんだろうと仲間内で結論づけたのだが……。

 

遺体が発見された状況を、後に彼らは大家から聞いた。

 

 

ある時。部屋の中から、

 

『いつまで、いつまで、いつまで』

 

という声が、ひどい棒読みで繰り返されるようになり、それが何日か続いて不審に思った住人が大家を呼んで、というものだったそうだ。

冬場だったこともあってか、亡くなってから一ヶ月近く死体は放置された状態だった。

 

「……じゃあ、『いつまで』ってのは、早く見つけてくれ、って意味か?」

「まさか……」

 

鳥はどこかから逃げたんだと大家は信じているようだったが、Bさんたちは直感的にそうではないだろうと思った。しかし何が『そうではない』のか、誰も上手く言葉にできず、部屋に残って車座になってぼんやりしている内、仲間の一人が、

「……まあ。俺たちだけでも、あいつのことは憶えていてやろうよ」

というようなことを呟いた。

 

 

その瞬間。部屋の隅の方から、

 

『いつまで……』

 

と、小さな声がした。

 

見ると、壁際の辺りにさっきまでいなかったはずの大きな鳥のようなものがうずくまっている。

(ええ、何だこれ……)

と思っていると、それは顔を上げて、

 

 

『いつまで?』

 

 

と、今度は語尾の上がった、はっきりとした疑問系で言った。

 

死んだ男の、顔と声だった。

 

 

……と、部屋から逃げ出した後で、仲間の一人が証言したが、Bさんはよく憶えていないという。

ただ、明らかに普通のオウムではなくて、目、鼻、唇のはっきりわかる顔をしていたというような記憶はぼんやりとある。

「逃げたりせず、ずっと部屋にいたんだなあ……」

という話になった。

同時に、

「あいつは、鳥じゃなくて、自分の影のようなものを飼っていたんじゃあ……」

という話も出て。

最終的に、

「あの部屋には結局、あいつしかいなかったんだな……」

と、誰かが呟いた。

その言葉を聞いた時、ふっと背中が寒くなった、とBさん。単に怖いというのとは少し違う、とも……。

死体の転がる部屋から響いていた声の話と、自分たちの耳で聞いた、あの、

『いつまで?』

という声とを思いながら、どちらかといえばひどく虚しい、物悲しいような気持ちになったのだという。

 

部屋はその後、幽霊が出ると言って借り手がつかなくなり、アパートが取り壊されるまでずっと空っぽのままだったそうだ。

 

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『 禍話REBORN 第二十三夜』(2026年3月21日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/832725647

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:32:40くらいから)

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禍話wiki

https://wikiwiki.jp/magabanasi/

見出しの画像はこちらから使用させていただきました

https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22224418&word=%E4%BB%A5%E6%B4%A5%E7%9C%9F%E5%A4%A9-4c

禍話リライト 怪談手帖『松明丸』

f:id:venal666:20260507185804j:image

 

『魔の物が出る』というような、ひどく曖昧な噂のある山へ度胸試しのつもりで登ろうとしたTくんは、麓から程ない林の間に、炎のような光に浮かび上がる顔のようなものを見てしまい、早々と逃げ帰った。

 

それは、腐りかけた人の目鼻の途中から鳥類の嘴を解かし合わしたような、ひどくグロテスクな代物で、人間の顔と比べるとずいぶん小さかったという。

 

恐怖心が冷めた後で、

『俺は天狗を見たんだ』

などと得意げに触れ回っている内はまだよかったけれど、下山後、Tくんはしばらくして、家の中のランプや電灯など、あらゆる照明の中に、その『顔とも呼べぬ顔』を、度々目撃するようになり、徐々に精神を病んでいった。

 

拒絶を破って見舞いに行った友人の前で、

「自分の幻覚なのはわかってるんだけど……」

と吐露し、枕元の傘付きランプのスイッチを入れると、やはり光の中に、あのとろけたような鳥の顔モドキがグジュグジュと浮かび上がってきた。

 

その瞬間。友人が目を剥いて、

「ウワァッ!」

と叫びながら、その顔をはたき落とした。

 

 

グジャッ

 

 

と、音を立てて。

幻覚だとばかり思っていたそれは、床に落ちて、無惨に爆ぜ割れた。

辺りに胸の悪くなるような腐臭と鉄錆の混じったような臭いが広がり、唖然としつつ顔を見合わせるTくんと友人の前で、床には肉と毛の塊のような、もはや原型の伺えない、ネズミの死骸くらいの何かが、汚いシミを作っているばかりだった……。

 

それからTくんは何事もなく過ごしているが、あの時のことを思い出すと、全身がムズムズするような感覚に襲われるという。

『アレ』は、つまり幻覚ではなかったわけだけど、かと言って、例えば『山から憑いてきたオバケの類い』、というような感じもしない。

強いて言うならば、『何かに触れて、知らず生えてきていたデキモノを、無理やりむしり取ってしまった感じ』がする。

……と、彼は、どこかにまだカサブタやシコリが残っているような、やや歪んだ表情で言うのであった。

 

 

※『松明丸』とは、鳥山石燕の画集『百鬼徒然袋』に描かれた妖怪で、天狗礫の石より出る光とされ、先行研究などでも『魔縁』の名を当てた鳥型の妖怪図と結びつけて考察され、暗闇を照らす光ではなく、仏道修行や思想を妨げる、人を狂わす怪火と解釈されている。

今回蒐集した話においては、本来様々な含意を含む『百鬼徒然袋』の記述にあえてそのままのっとり、山の怪異そのものというよりその副産物、祟りにまで至らぬ障りが肉を得たような、得体の知れぬ何か関する仮の題として採用したもので、例によって直接の関係はない。

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『 禍話REBORN 第十二夜』(2026年1月3日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/828941104

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:51:25くらいから)

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禍話wiki

https://wikiwiki.jp/magabanasi/

5/22(金)は阿佐ヶ谷ロフトAでイベント!
配信もあるよ!

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/350997

見出しの画像はこちらから使用させていただきました

https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=22939753&word=%E6%9D%BE%E6%98%8E%E4%B8%B8-4c

禍話リライト こっくり譚「じょうざい」

f:id:venal666:20260413111151j:image

 

こっくりさんの話を収集しているKくんから提供された話。

 

ある高校で、こっくりさんがブームになったそうだ。一時は、放課後になると何組ものグループが各教室でこっくりさんを呼び出そうとそれぞれ集まっているような、そんな状態だったという。

 

しかし、こっくりさんというものは、意外と上手く行かなかったりするものだ。そもそも呼び出しに応じず硬貨が動かないこともあるし、やっと動いたと思ったら全く意味のわからない言葉を告げられることもある。その言葉をアナグラムにして、何とか意味がわかるようにしようと頑張るグループもあったが、ずっとそんな調子なので、ウンザリしてもうやめようとなる生徒がほとんどだった。

 

 

だが、そんな中で唯一、ちゃんと意味のある答えばかりが返ってくるグループがあるらしいと話題になった。

もっとも、その内容については、考えようによっては当たっていると言えなくもない、くらいのものだったらしいが。

 

しかし、一つ妙な点があった。

それだけ高確率でこっくりさんが来て答えてくれるのなら、その都度はしゃいで誰かを呼んだりしそうなものだ。

だが、彼らは一切そういうことはしない。ただただ、自分たちだけで淡々とこっくりさんを続けているのだ。

 

 

(閉鎖的なやつらだなあ……)

そうは思うものの、どうしてそんなに上手く行くのか、やはりそれが気になって仕方ない。

そこで上手く行かなかった生徒たちは、そのグループに何かコツがあるのかと訊いてみることにした。

すると、こんな答えが返ってきた。

 

「じょうざいだよ」

 

(……じょうざい?)

何のことか、全くわからなかった。

(……じょうざいって、『錠剤』ってこと?)

まさか、何か変な薬でも使ってラリった結果なのではないか。質問に来た内の一人がそのように考え、慌ててグループを問い正した。

「いやいや、違う違う」

その問いを、メンバーの一人が笑いながら否定する。

 

 

「浄化の『浄』に、財産の『財』の方の『浄財』だよ」

 

 

「……え?」

質問に来た全員、その言葉を知らなかったため、すぐに辞書で調べてみた。

 

辞書には、寺社に寄付したお金のこと。もしくは『お賽銭』のことだと、そう書いてある。

(……えっ⁉︎)

 

 

彼らは、近所の神社の賽銭箱からお金をくすねてきて、それを使ってこっくりさんをしていたのである。

そういう十円玉を使っているから効果があるんだと、彼らは言う。

 

 

つまりは、賽銭泥棒である。

薬物乱用とは別の意味でダメな話だ。当然『それはダメだよ!』という流れになったのだが、じゃあどこの神社から賽銭を盗ってきたのか、ということになる。

それについて、彼らは『どこそこにある神社だ』と説明したわけだが……。

 

 

その地区には、廃神社が一つあるだけだった。

彼らはそこに置かれた賽銭箱から盗ってきている、と言うのだ。

(ええ……)

 

 

とはいえ、話に箔をつけるためにホラを吹いているのかもしれない。

彼らを刺激して話が大事にならないように、ということもあり、その場はそれで話を打ち切り、後日、何人かの有志で問題の廃神社を確認しに行くことになったのだが……。

 

 

そこで彼らは奇妙な光景を見た。

 

 

普通、賽銭箱というものは拝殿の入り口、参拝客の鳴らす鈴の下に置かれているものだ。

なのに、その廃神社の賽銭箱は、何故か本殿の奥の方、それこそ本来なら御神体が安置してあったであろう場所へ移動させられていた。

御神体自体は、どこかに移動させたのか、あるいは誰かに持ち去られたのか、どこにも見当たらない。

 

そんな、がらんどうになった本殿のど真ん中に。

表から持ってこられた賽銭箱が、横倒しになって放置されていた。

 

例のグループ曰く、その状態でも中に手が届かなかったので、棒の先端に粘着テープをつけて、それで賽銭を取り出したらしい。

 

「しかし、何でこんなとこまで賽銭箱を動かしたんだろうなあ」

横倒しになった賽銭箱を見ながら、現場に来た面々が話していると、一人があることに気がついた。

「……あれ? そういやさ。あいつら、何度かここで賽銭を盗った、って言ってたよな?」

「ん、ああ」

「……こんな神社。そんなに何度も盗れるほど、賽銭って残ってるのか?」

「……あ」

 

 

ここがいつ廃神社になったかわからないが、その頃の賽銭が残っていたとしても、たかが知れている。

まして、例のグループが来るような場所だ。既に他の誰かが賽銭泥棒に入っていてもおかしくない。もしかすると、賽銭箱が本殿まで運ばれているのも、そうした輩の仕業かも知れない。

だとすると、そんな場所に、何度も盗れるほど賽銭が残っているものなのだろうか。

 

 

「……誰かが今も、賽銭を入れに来てるんじゃね?」

 

 

一人がボソッと呟いたその言葉にゾッとして、全員すぐにその場を後にしたそうだ。

 

 

後日、例のグループがまたこっくりさんをやっているのを見かけた。

聞くと、やはりあの廃神社の賽銭を使ってやっているという。

そこで、ふと彼らの手元を見てみると……。

 

 

彼らの使っている十円玉は、何年も放置してあったとは思えない、あの廃神社の年代とは合わない、ピカピカのきれいなものだった。

 

 

その後、いろいろあって、その学校ではこっくりさんをする者はいなくなったそうである。

 

 

 

 

この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『 禍話フロムビヨンド 第三十二夜』(2025年2月22日)

https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/811529472

から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:07:30くらいから)

題はドントさんが考えられたものを使用しております。

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