とあるサバゲーグループの話。
あちこちの山野や廃墟でサバゲーを楽しんでいたグループだったそうだ。
その時も、彼らは某所の山中にてサバゲーを楽しんでいた。
二つのチームに分かれ、フィールドである山谷を駆け回る。
その内、一方のチームの形勢が次第に不利になってきた。
不利になったチームのリーダーが、メンバーたちに指示を飛ばす。
「よし! 一旦分散して、最初の方に見かけた地蔵さんのあたりで集合しよう!」
その指示に従い、メンバーたちが分散し、移動を始める。
だが、チーム全員、リーダーの言葉に疑問を抱いていた。
(……お地蔵さんって、なんだ?)
(お地蔵さんがあった、みたいなこと言ってたけど。でも、そんなのなかったよな……)
(絶対、そんなのなかったよなあ……)
そう思いつつ、全員移動し、適当な場所で集まってまた戦い始めた。
弾がヒットして戦線から脱落した仲間たちが、次々と待機場所にやってくる。
そして彼らは、先程のリーダーの言葉について話し合った。
「さっきさあ。リーダーがお地蔵さんがどうとか言ってたけど。お地蔵さんなんか、あったっけ?」
「……いやあ?」
「無い、よねえ?」
やはり、誰一人として地蔵など見た記憶がなかった。
結局、彼らのチームは惨敗した。
リーダーも、最終的に弾がヒットしたのだろう。仲間たちの集まっている場所へ顔を出した。
「いやあ、負けちゃったよ。力尽きちゃったよ」
申し訳なさそうに言う彼に、仲間たちが訊ねる。
「いや、力尽きたのはいいんだけどさ? さっき、どこで集合しようって言ってたの? 地蔵ってどこ?」
「え、知らない?」
ゲーム終了後のため、敵チームの面々もそこに集まっていたので彼らにも訊いてみたのだが、やはり地蔵など見ていないと言う。
「え、地蔵なんかねえよ。こんなとこ」
「いや、あったよ」
「じゃあ、見に行ってみよう」
そういうわけで、もう日が暮れかけていたが、みんなでその場所を確認しに行くことになった。
現場に着き、あたりを調べてみたが、やはり地蔵など、どこにも見当たらない。
「地蔵なんかないじゃん」
「いや、あったんだけどなあ。俺、パッと見た時に……」
そこまで言って、リーダーは急に黙り込んだ。
どうしたのか。そう思いながら仲間たちが怪訝な顔をして見ている中、彼は言葉を続ける。
「……あ。ごめん、地蔵じゃねえなあ」
何を言っているのか、理解できずにいる仲間たちに向け、彼はこう言った。
「だって。地蔵があんなカラフルなわけ、ないもんな」
(えっ……)
全員、絶句した。
恐らく、彼がそこを見た時。
そこに、子供くらいの背丈で、カラフルな見た目の、
『何か』
がいた、ということなのだろう。
そして、それをそのまま認識すると良くないと、彼の本能が、無意識にそう判断した、ということなのだろう。
それ故に、そこにいた『何か』を『地蔵』だと、無意識の内に、記憶を改竄したのだろう。
リーダーのその言葉を聞き、全員がゾッとした。
そのため、彼らは二度とその土地ではサバゲーをやらなくなったそうだ。
だから、皆さんも。
知らない土地に出かけて『地蔵』を見かけた時。
それなのに、同行者はそんなものは見ていないと言う時。
用心した方がいいのかもしれない。
それは、貴方の脳が、無意識に記憶を書き換えているだけで。
実際は『地蔵』に似ているだけの、
『何か』
かもしれないのだから。
この話はかぁなっきさんによるツイキャス『禍話』 『忌魅恐 最終夜』(2021年5月7日)
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/681385848
から一部を抜粋、再構成、文章化したものです。(0:24:00くらいから)
題はドントさんが考えられたものを使用しております。
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